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【ブログコント】影のない女

影のない女

作:水輪ラテール

 


漱流 金沢 / Norio.NAKAYAMA

 

雰囲気のあるバーのカウンター。
カウンター内にバーテンが1人。カウンター席には女が1人。
女は、少しわけありといった面持ちである。

 

(以下、バーテンを『バー』と記す。)

 

女「………。(溜息をつく)」
バー「どうか、されましたか?」
女「ううん。……ちょっと、ね。
バー「 私でよければ、話相手になりますよ?」
女「………そうね、聞いてもらおうかしら。」
バー「ええ、よろこんで。」
女「(遠くをぼんやり眺め、回想にふけりながら)………昔の男の話。」
バー「はい。」
女「……昔々。ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。おばあさん が川で洗濯をしていると、川上から、大きなモモが、」
バー「あの、」
女「もう少し聞いて、ここが大事な所なの。」
バー「…はあ。」
女「川上から、大きなモモが、どんぶらっこっこ、どんぶらこっこと流れてき ました。――ねえ?びっくりするでしょ。どんぶらこっこよ、どんぶらこ っこ。あなたわかる?どんぶらこっこって。」
バー「いや、その、正確には……。」
女「わたしには、どうしても理解できなかったの。」
バー「そ、そうですか。」

 

 やや間。

 

バー「それがお悩みですか?」
女「違うわ。言ったでしょ、昔の男の話だって。」
バー「あ、はあ…。」
女「それでおばあさんはモモを家に持ち帰ったわ。おばあさんが包丁でモモを割ろうとしたその時………。ねえ、どうなったかわかる?」
バー「その……、(女の顔色を窺いながら)中から、元気な、赤ん坊が出てきた、 り、して…、」
女「(号泣)」
バー「あの、お客様。」
女「(泣き止みながら)ごめんなさい。急に思い出しちゃって、アイツのこと。」
バー 「アイツとは、そのー…、」
女「桃太郎、 って呼ばれてたわ。」
バー「(おそるおそる)ええっとー、…もしかしてー、あのー…、昔話、の?」
女「そ。……この辺じゃ有名?」
バー「いや、まあ、…全国的に。」
女「私ね、わかってなかったの、彼のこと。すくすく育った事とか、動物をき びだんごでてなずけた事とか、鬼を退治したこととか、とにかく全部。そもそも、このお話自体………。」
バー「それで、お悩みなんですか?」
女「幻滅するでしょ?桃太郎を知らない女なんて。」
バー「いや、」
女「世間知らずもいい所よ。ダメ、全然ダメ、私なんてダメ太郎よ、いえ、ダ メ太郎子よ。そうでしょ?」
バー「そのー…」
女「そうだといってよ!(カウンターに突っ伏す)」
バー「その……、お客様は、ダメ太郎子です。」
女「(起き上がり)――今、あった?」
バー「…は?」
女「影。」
バー「え?」
女「影のある女に見えたかって聞いてるの。」
バー「影のある女、ですか。」
女「そう。正直に答えて。あったでしょ、影?」
バー「……残念ながら。」
女「ダメかー!あちゃー!」
バー「あの、一体何でお悩みなんですか?」
女「影が欲しいのよ、影が。いい女には影があるものでしょ?」
バー「そうかもしれませんが………。」
女「――昔々いじめられている亀を助けた」
バー「お客様。」
女「なに?」
バー「方向性を変えた方が。」
女「わかったわ。――私が尽くした、ある男の話。私はいつも耐えなくてはいけなかった。来る日も来る日も。」

バー「ええ。」

女「山を越え、谷を超え、僕らの街までやってきて。その男に忠義を尽くしたの。まるでアイツは主君のように振る舞ったわ。でも、それでよかった。それで幸せだった…。だって、耐え忍ぶと書いて忍者。」

バー「にん?」

女「彼のためなら密偵、暗殺、流言飛語、なんだってしたでござる。」

バー「ござ…、お客様?」

女「いつしかは、殿から私はこう呼ばれるようになったでござる。…影、って。」

バー「あの…。」

女「(目をキラキラさせて)どう?」

バー「いや、その影じゃないです。」

女「……そう。ダメね、私。」

バー「あ、それ!それです!」

女「え?」

バー「いま、ちょっと影ありましたよ。」

女「ほ、ほんと!?」

バー「ええ!ちょっといい感じでした。」

女「これなのね。これが影のある女なのね!」

バー「ええ!よかったですね。」

女「今日は、ココに来れて、……ダメね、私。」

バー「?」

女「本当に、マスターにはなんとお礼を言ったら、……ダメね、私。」

バー「あの…。」

女「それじゃあ、今日はこれでドロンしま……ダメね、私。」

バー「あのー。」

 

女、忍者のように周囲を伺い、出口へササササッと向かう。

 

バー「………。」

女「(壁を背にしながら)お酒、美味しかったでござるよ。ニンニン。…ダメ忍者でござるね、拙者。」

 

女、出て行く。 

 

バー「(業務日誌を取り出し、書く。)影のない人もまた、魅力的である。」

 

 

終了。

 

 

あとがき

まあ、居ないと思いますけど、上演したい人いたら、

f:id:do-demo-e-jump:20140715141204p:plainまでご連絡くださいませ。*1

 

 

 

 
 

*1:一応、著作権あるよ。

☆あの素晴らしい愛をもう一度
【ご覧のスポンサーの提供でお送りいたしました。】